治療を行ううえで重要な考え方の1つとして「虚実」があります。
「虚証(キョショウ)」とは、体にエネルギーが不足している状態のことです。
あらわれる症状は、不足しているものや部位によりさまざまですが、症状が軽く長引きやすいことが多いです。
治療は不足しているものを補います。(補法)
「実証(ジッショウ)」とは、体に余分なものが溜まっている状態のことです。
急激に強い症状が発現しますが、比較的に回復が早いのが特徴です。
病邪を特定し取り除く治療を行います。(瀉法)
【気】
東洋医学でいう「気」は、生命活動のエネルギー源であり、活動を推進する重要なものです。
気が不足(虚/キョ)している状態を「気虚(キキョ)」といいます。
倦怠感・食欲不振・手足の冷え、自汗(ジカン※)などの症状が現れます。
実証(ジッショウ)には気の流れが滞る「気滞(キタイ)」、逆行する「気逆(キギャク)」があります。
気滞は精神の抑うつや腹部の張り、おならなどの症状。 気逆は咳やげっぷ、胃のむかつきや吐き気、イライラなどの症状が現れます。
※自汗:暑くなくてもじっとりと汗ばむ状態。
【血】
東洋医学でいう「血(ケツ)」は身体の栄養素であり、精神を安定させる重要な物質です。
血が不足した状態を「血虚(ケッキョ)」といいます。
目の疲れ、めまい、動悸、月経不順、手足の冷え、精神不安定などがあらわれます。
血が停滞した状態を「血瘀(ケツオ)」といいます。 肌のくすみ、月経痛、便秘、頭痛、肩こりなどの症状があらわれます。
【津液】
東洋医学では体内の「血(ケツ)」以外の体液を「津液(シンエキ)」といいます。
津液は肌や髪の毛・臓腑をうるおしたり、身体を冷やす働きがあります。
津液が不足すると、口やのど・鼻のかわき、肌・髪の乾燥、便秘などがみられます。(→陰虚)
また、熱がこもるため (※)五心煩熱や寝汗などの症状が出ることもあります。
過剰な津液が体内に溜まったものを「痰湿(タンシツ)」といいます。 手足の冷えやだるさ、頭痛、下痢、すぐ眠くなるなどの症状があらわれます。
(※)五心煩熱とは、両側の手のひら足のうら、胸中に熱感やそわそわ感がおこること。