「東洋医学」とはー歴史・哲学から西洋医学との違いまで分かりやすく解説ー

1.歴史

東洋医学は2000年以上前の古代中国で生まれました。生活の中での原始的な発見、自然の観察から生まれた思想や哲学、戦国時代の過酷な環境から生まれた実践的な治療。こういった長年の経験が東洋医学の起源であり、「経験医学」と呼ばれる理由です。

日本へは6〜7世紀ごろ、遣隋使や遣唐使、仏教とともに伝わりました。平安時代の日本最古の医学書『医心方(いしんほう)』などを経て、国内で独自の発展を遂げます。

江戸時代には、日本人の体質や気候に合わせ、不要な理論を削ぎ落として臨床を重視する「古方派(こほうは)」などが台頭しました。また、オランダから入ってきた「蘭方(西洋医学)」と区別するために、従来の医学を「漢方」と呼ぶようになります。

明治時代には政策により、医師免許の要件が西洋医学に限定されたことで一時衰退しましたが、昭和後期に漢方薬が医療保険に適用されるなど、その有効性が科学的にも再評価されています。

2.地域

東洋医学のルーツである中国は広大なため、地域により気候や生活習慣が異なります。最古の理論書『黄帝内経・素問(こうていだいけい・そもん)』の「異法方宜論(いほうほうぎろん)」には、5つの地域でそれぞれ発展した治療法が融合した経緯が記されています。

【中央(平野部)】…導引(どういん・体操)・按蹻(あんきょう・マッサージ)

湿気が多く平坦な地形。食べ物は豊富で人々が運動不足になりがちでした。身体を動かして気の巡りを良くし、手足の冷えや麻痺を防ぐ治療法が発達しました。

【東方(海沿い)】…砭石(へんせき)

魚や塩を多く摂る生活で、皮膚疾患が多かった。石のメス(砭石)で膿を出す等の治療技術が発達しました。

【西方(砂漠・高原)】…湯液(とうえき・薬物)

寒冷で風が強い気候、肉や乳製品の多い食生活により内臓の不調が出やすかった。草根木皮を煎じて飲む薬物療法が生まれました。

【南方(温暖湿潤)】…微鍼(びしん・鍼)

高温多湿な気候、筋肉や関節にしびれが出やすい。細い鍼を用いた繊細な治療(鍼治療の原形)が発達しました。

【北方(寒冷な草原)】…灸(きゅう)

極寒の環境で冷えた身体を外から温める灸が発達しました。

このように、各地の環境から生まれたアプローチが、のちに体系化されていきました。

3.三大古典

医学の体系化は前漢〜後漢時代(紀元前~2世紀頃)に、それまでの民間療法や自然哲学が集大成され、3つの重要な医学書(三大古典)が誕生しました。

『黄帝内経(こうていだいけい)』…医学理論のルーツ

中国最古の医学書です。伝説の皇帝「黄帝」と、名医「岐伯(きはく)」らの問答形式で書かれています。天文学や地理学を取り入れ、人間が自然と調和して生きるための養生法や、陰陽五行に基づいた身体のメカニズムを初めて体系化しました。

『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』…薬物療法のルーツ

薬草の神様とされる「神農」の名を冠した、最古の生薬(薬草)の専門書です。365種類の植物・鉱物・動物を、副作用の有無や効果に応じて「上薬(養命のための無毒の薬)」「中薬(体力を補う薬)」「下薬(病気を治すが毒性もある薬)」の3つに分類しました。これが現在の漢方薬のベースです。

『傷寒論(しょうかんろん)/金匱要略(きんきようりゃく)』…臨床・治療のルーツ

後漢の時代、急性熱性疾患(傷寒=今でいうインフルエンザやチフスなど)が大流行し、一族の多くを亡くした医師「張仲景(ちょうちゅうけい)」が著しました。
ウイルスなどが体内に侵入した際、時間の経過とともに病状がどう変化するかを6つの段階(三陰三陽)に分類し、それぞれの段階に応じた的確な漢方処方を記した、極めて実践的な臨床バイブルです。
金匱要略は難病(内科・婦人科などの慢性疾患)の治療法や処方をまとめた実践的な医学書です。

4.思想

東洋医学の思想は「道教と儒教」の価値観が深く息づいています。

  1. 道教(タオイズム)の老子・荘子の思想は、自然の営みに逆らわず、あるがままに生きる「無為自然(むいしぜん)」の思想が、病気を予防する「養生(ようじょう)」の概念に直結しました。
  2. 儒教の思想は、身体を傷つけることを良しとしない(孝行の始まりは親からもらった身体を健康に保つこと)という価値観が、身体をメスで切る外科処置よりも、内服薬(漢方)や微細な鍼で全体のバランスを調える内科的な手法を発達させる背景となりました。

5.哲学

自然界と地続きの身体観を持つ東洋医学は、宇宙の法則や自然哲学(道教や陰陽五行思想)をそのまま人間の身体に当てはめて考えています。

  1. 陰陽論(いんようろん)…すべての事象を「陰(冷・静・裏)」と「陽(熱・動・表)」に分け、その動的なバランスを重視します。
  2. 五行説(ごぎょうせつ)…万物を「木・火・土・金・水」の5要素に分類し、互いに影響し合うと考えます。
    人間の内臓も「五臓(肝・心・脾・肺・腎)」としてこれに配当されます。
  3. 気・血・水(き・けつ・すい)…身体を構成・維持する3つの要素です。
    エネルギーである「気」、血液成分である「血」、水分やリンパ液を指す「水」が体内をスムーズに巡ることが健康の条件です。
    調和が乱れると不調が起きると考えます。
  4. 四診(ししん)…視覚・聴覚・問診・触診(脈やお腹を見る)を組み合わせた独自の診断法です。

6.総論

心身一如・天人合一という考えの東洋医学は、病気そのものを攻撃するのではなく「病気を持っている人間(患者)のバランスを整える」ことにあります。

  1. 心身一如(しんしんいちにょ)…心と身体は切り離せない一つのものであるという考え方です。精神的なストレスが内臓の不調を引き起こし、逆に内臓の乱れがメンタルに影響すると捉えます。
  2. 天人合一(てんじんごういつ)…人間は自然の一部であり、季節の変化や気候(気圧や湿度など)と密接に連動していると考えます。
  3. 同病異治・異病同治(どうびょういち・いびょうどうち)…同じ病名でも、患者の体質や状態(証:しょう)が違えば異なる治療を行います(同病異治)。
    逆に、異なる病名でも根本の原因(バランスの崩れ方)が同じであれば、同じ治療を行います(異病同治)。

7.西洋医学との違い

西洋医学は、検査で原因を特定し診断名を付け、患部をピンポイントで治療(手術や投薬)することを得意とします(急性疾患やケガに強い)。

それに対して東洋医学の特徴は、全体観「バランス」を重視しています。

  1. 症状のある部分だけでなく、心身全体の状態や体質、生活習慣を総合的に見ます。
  2. 未病(みびょう)…病気と診断される前の「なんとなく調子が悪い」状態の改善や予防を得意としています。

8.最後に

みなさんが思う鍼治療は、保険適応の症状「神経痛・リウマチ・五十肩・腰痛症・むち打ち後遺症・頚腕症候群」に効くイメージでしたでしょうか?

しかし、東洋医学は不定愁訴と言われる検査で異常が出ない・診断名がつかない不調、慢性的な症状、体質の改善、自律神経の乱れなど、機能的失調のケアを得意としています。

当院は東洋医学の考えを大事にする全身治療を得意としています。何かお困りのことがあれば、安心してご相談ください。 

レスト院長 鈴木康博

鍼灸指圧マッサージレスト

横浜元町・中華街で3代続く、鍼灸と指圧マッサージの老舗鍼灸院です。

当院では、すべての施術を国家資格を持つスタッフ(鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師)が担当しています。

長年の経験と確かな技術で、お一人おひとりの体調や症状に合わせた施術を行っています。

ストレスや疲労からくる慢性的な腰痛、頭痛、耳鳴り、膝の痛み、首こり、肩こり、坐骨神経痛、自律神経の乱れ、不安や不眠などのお悩みに対し、鍼、お灸、マッサージを組み合わせた施術で体のバランスを整え、症状の緩和を目指します。

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